イラン〜アフガニスタンの国境付近で遊牧生活を営んでいたバルーチ族による、サドルバッグと言う馬の背中に掛けて使われた袋の表面です。パイル織部分は縦約75㎝、横約80㎝です。前所有者様によると1890年代に織られたアンティークとのことです。色柄共にバルーチ族特有の風情で、シルクのようなさらさら・しっとりしたウールもさすがバルーチ！と感じます。ほぼ全て天然染料由来の色かと思います。フィールドの中央に白をアクセントにした八芒星を置き、唐草模様のような紋様で取り巻いています。外周のボーダーにも白が効果的に用いられて全体を引き締めています。インディゴと濃淡の小豆色が主の抑えたトーンですので暗い室内ではやや地味に見えますが、太陽光の元では驚く程の変化を見せます。写真は一枚目は晴天の屋外で撮影しました。濃いインディゴが艶々と光り、紋様が浮かび上がるかのようです。バルーチ族の古い絨毯を“暗闇に光る宝石”と欧米のコレクターが讃える所以と感じます。一部に用いられた黄色も可愛らしいです。あまり使用されなかったようで、パイルは全体にフサフサでとても良い状態です。上端の紋織りも美しく保たれています。織組成が違うため、紋織りとの境界付近で若干の波打ちがあります。上下は切りっぱなしでかがられていません。下端にはやや傷みがあり、左右の隅には解れがあります。左右の端は多少の擦り切れはありますがオリジナルの状態です。敷物としての使用も問題ないしっかりしたラグですが、床に敷く際には解れ止めとして上下をかがるべきと考えます。飾りとしては現状でも大きな問題はありません。ご希望がございましたら当方でかがり直す事も可能ですが、素人の手仕事であることをご理解の上ご相談下さい。購入時はかなり汚れていましたので、ウール用洗剤で洗濯しました。個人的な感覚ではありますが、現状は頬ずり出来るくらい綺麗です。我が家では鑑賞のみで実用しておりません。オールド キリムから始まり、トライバル ラグ・部族系絨毯と言われる毛織物にはまり、オランダのディーラー様から譲り受けたものです。気に入って入手した物ですが、収納整理のための出品です。長い年月を経てきたなりの難がありますが、作成し使用してきた人々や歳月に思いを馳せつつ、現状のまま愛でて下さる方の購入をお待ちしております。